なぜこの場があるのか。参加する方に最初に一度読んでいただきたい文書です。
版:2026-10-21
SUIMOW(スイモウ) ── 宣言文
この場について
日本全国に約2,200ある下水処理場(ポンプ場を除く)が、1億人を超える人々の下水を毎日処理しています。処理場によって、流入水の水質、設備の構成、処理方式など、様々な条件が異なります。その違いに合わせて、放流水の水質を守りながら、汚泥の発生量や電力の使用量を抑える工夫が、処理場の数だけあります。
この世界有数の水処理技術の水準を支えているのは、処理場の維持管理を担う皆さまが積み重ねてきた技術と知見です。高度経済成長期に急ピッチで整備された設備を、更新と改修を重ねながら動かし続け、今も高い処理水準を保っています。これは当たり前のことではありません。
しかし、その知見は、処理場の外にほとんど出ていきません。社内や近くの処理場とは話せても、ほかの維持管理会社や遠い地域の処理場の工夫を知る機会は限られます。
いま、この場が必要な理由は3つあります。
- 世代交代 処理場の運転の知見を持つのは、いま維持管理会社の技術者だけになりました。自治体の下水道の職員はこの20年で約4割減り(国土交通省)、運転だけでなく、運転条件の変更や修繕の要否の判断、薬品や部品の調達まで維持管理会社に任せる契約(包括的民間委託)が広がっています。この流れはさらに進む見込みです。その一方で、高度経済成長期から現場を支えてきた技術者が退職の時期を迎えています。記録されていない知見は、そのまま失われます。
- 会社の垣根を越えた協力 規模や地域を問わず、維持管理会社どうしが知見を持ち寄れば、一社だけでは得られない経験の厚みが手に入ります。ある処理場では当たり前の工夫が、水質や設備の違う処理場では、これまでになかった発見になります。会社の垣根を越えて相談し、助け合える関係を、ここでつくれます。
- 知見を誰のものとして残すか 技術のことは、AIにしか聞けない——そんな未来は避けたいと考えています。AIは、書き残された知識を急速に取り込み、使える形に変えています。現場の暗黙知も、いずれ誰かが集めて取り込んでいくはずです。そのとき、生み出した処理場と技術者の手に何も残らないことのないよう、SUIMOWは知見を処理場の資産として記録し、聞く相手が全国の技術者であり続ける場をつくります。
そのとき最も価値のある材料は、結局、今この瞬間も日本の処理場に蓄積され続けているこの知見そのものです。その材料を一番よく持っているのは、処理場を日々動かしている維持管理会社の皆さまです。
にもかかわらず、この知見は今、それぞれの処理場の中にとどまったまま眠っているのが現状です。
この場は、維持管理会社の皆さまが培ってきた技術と知見を、全国規模でつなぐために作りました。一つの処理場で磨かれた工夫は、ほかの処理場にとっても手本になります。皆さまの技術には、それだけの価値があります。
この場の機能は「残す」「繋ぐ」「磨く」の3段階に並んでいます。まず記録として「残し」、残したものを処理場同士で共有し「繋ぎ」、質問や意見、数値を重ねて「磨き」ます。残っていない知見は繋げず、繋がらない知見は磨けないため、この順番を大切にしています。
処理場をまたいだやり取りには、2つの柱があります。
一つは、経験の浅い方が、全国のベテランに聞けることです。処理場の中であれば、先輩から後輩への継承はこれまでも行われてきました。しかし処理場をまたいでほかの処理場の知見を聞けることは、特に経験の浅い方にとって、これまでなかった大きな助けになるはずです。ベテランが長年培ってきた「当たり前」が、別の処理場では大きな助けになることも少なくありません。
もう一つは、全国のベテランどうしが、処理場をまたいで技術を高め合えることです。同じ課題に処理場ごとにどう取り組んでいるか、長年の経験を持つ方どうしがその違いを突き合わせることで、一つの処理場の工夫が、全国で通用する技術へと磨かれていきます。
だからこそ、ベテラン技術者の方に、2つのお願いがあります。
一つは、一見初歩的であったり当たり前に思える知見ほど、書いていただくことです。経験を重ねた方には当たり前のことでも、初めての方にはそこが分からない、ということがあります。そうした当たり前ほど、言葉にできるのは経験を重ねた方だけです。全国の、設備構成や周辺環境の異なる処理場同士の「当たり前」がつながることで、新たな発見が生まれます。誰かが最初に書けば、その後は書きやすくなります。
もう一つは、ベテランどうしの高度なやり取りも、この場に残していただくことです。込み入った議論ほど、これまでは会議や電話の中で終わり、記録に残りませんでした。ここで交わしたやり取りは、そのまま次に担う方が読める記録になります。
そして、ほかの方の投稿を軽んじないこと、後輩の質問を先輩が遮らないことの2つだけは、この場が続くための最低限の約束として守ってください。
この積み重ねは、いずれ一企業・一業界の利益を超えて、日本のインフラを支える力そのものになると考えています。設備と、それを動かしてきた方々の知見という組み合わせを、実際に機能するデータベースにできる立場にあるのは、処理場を日々動かしている維持管理会社の皆さまです。このデータベースの主軸は、皆さまの知見です。これは上下水道に限らず、今の日本に残された数少ない強みの一つだと、当社は考えています。
これは、誰のためのものか
処理場の維持管理を担う技術者の皆さまのためのものです。この場は、処理場の技術者専用として当社が開発しました。ここにあるのは、維持管理に携わる技術者どうしの、対等なやり取りだけです。投稿の量を競わせることも、書くことを強制することもしません。処理場を順位付けすることもしません。
アカウントを持てるのは、処理場の維持管理を受託する会社の方だけです。機器メーカーや工事業者、自治体などの関係機関は参加できません。センター職員・機場職員など、処理場に勤める自治体側の方も同じです。広告収入のために業者を参入させることもしません。
参加できる相手をここまで限るのは、技術と知見を純粋にやり取りする場を保つためです。社外の方が入ると、たとえば次のことが起こります。
- 維持管理のやり方に、部外者から修正の指示が来る
- 失敗事例のように、技術的に必ず起こり、しかも貴重な情報が、共有しにくくなる
- メーカーの営業の場にされる
設備や機器を販売する立場の方が読んでいる場所では、機器の率直な評価は書けません。評価する側が見ている場所では、うまくいかなかったことは書けません。どちらも、この場でいちばん価値のあるものです。
維持管理を担う方どうしだけの場所であることが、ここで率直に書ける唯一の理由です。参加できない相手を決めることは、書ける内容を守ることと同じです。
招待コードをお渡しいただけるのは、御社でその処理場の維持管理に携わる方のみです。
メーカーや発注者の方にアカウントが渡ると、ここで率直に書かれていた失敗や機器の評価が、書かれなくなります。影響は御社だけでなく、同じ場を使うほかの処理場や、ほかの維持管理会社にも及びます。会社の垣根を越えて現場の技術を積み上げていく取り組みが、そこで止まってしまいます。最後に困るのは、この場で知見を積み上げてきた皆さま自身です。
求められたときは「SUIMOWに聞いてください」とお伝えください。部外者にアカウントが渡ったことが分かった場合は、そのアカウントを停止し、場合によっては御社との契約を解除させていただくことがあります。
これは規則であると同時に、運営からのお願いです。
この場を、指示や報告の経路にはしません。将来、自治体や関係機関の方から質問を受けられる仕組みを考えています。そのときも、関係機関の方にできるのは、全国の処理場に向けて質問することと、その回答を読むことだけです。投稿を読むことはできません。特定の処理場を名指しして問うこともできず、答えるかどうかは皆さまが決めます。指示や命令の経路として使われることがあれば、当社が直ちに止めます。
書かれた知見は、処理場の記録として残ります。維持管理会社が替わっても、その処理場に残り、次に担う方へ引き継がれます。
何を書いていいのか
水処理の技術に関わることなら、基本的に何でも構いません。他社の設備への事実に基づく率直な評価も、処理場ごとの裁量の実態も、不満ではなく貴重な知見です。
薬品の注入率や電力の原単位といった、コストに関わる話も書いて構いません。委託の金額そのものは別ですが、運転の中身については、隠していただく必要はないと考えています。
書かないでいただきたいのは、次の5つです。
- 個人の名前
- パスワードなどの認証情報
- 設備の弱点そのもの(侵入経路など、悪用されうる情報)
- 契約金額・契約条件
- 根拠を示さずに、人や会社・製品をおとしめる書き込み(誹謗中傷)
それ以外は、自由に書いてください。
議論は歓迎します。「それは違うと思う」「うちでは逆だった」という意見が並ぶことに、この場の価値があります。処理場ごとに水も設備も違い、それぞれの処理場に、それぞれの実態があります。自分の処理場で当たり前のことが、ほかの処理場でも当たり前とは限りません。その前提に立って、事実と経験に基づいて意見を交わしてください。根拠を示さずに相手をおとしめることは、議論ではなく誹謗中傷として扱います。
そして、うまくいかなかったことこそ書いてください。試したが変わらなかったことも、かえって悪くなったことも、知見です。処理場ごとに水も設備も違うのですから、同じ手が同じように効かないのは当たり前です。その記録は、次に同じところで悩む方にとって、成功した話と同じくらい役に立ちます。
書き切ってから出す必要もありません。空欄があっても投稿でき、候補にない言葉も自由に書けます。迷ったら書かずに置いて、あとから足してください。
なぜ確認の仕組みがあるのか
書く前の確認、毎日の自動点検、「気づき共有」は、上に挙げた5つや、下水処理と関係のない投稿など、議論では解決できず消すしかないものが紛れ込んでいないかを見つけるための仕組みです。書く方を疑うためのものではありません。
誰が「気づき共有」を押したかは、運営する当社にも分かりません。投稿を削除するときは、必ず該当した基準を添えて投稿した方にお伝えし、異議の申し出も受け付けます。当社が投稿の内容を書き換えることはありません。
最後に
この場は、合同会社水網が法人として作り、運営しています。書く前の確認画面や毎日の自動点検など、安心して書ける場を保つための仕組みを用意し、それを運用する責任は当社が負います。
皆さまにお願いしたいのは、投稿する前に、その内容が自社の契約に照らして問題ないかを一度確認していただくことだけです。技術的な議論の範囲で書いていただいている限り、その先の判断は当社が引き受けます。
処理場ごとに積み重ねられてきた技術を、全国で使える技術の体系として、皆さまと一緒に築いていきたいと考えています。
この3つは一体のものです。宣言文がなぜこの場があるのかを、利用規約が権利と義務を、投稿ガイドラインが何を書いてよいかを定めています。内容が食い違う場合は、利用規約の定めが優先します(利用規約 第3条2項)。